X動画広告は、テキストだけでは伝わりにくい商品の魅力を伝え、独自の「二次拡散(リポスト)」によって広告費以上のリーチを獲得できる強力なマーケティング手段です。
特に現在のX(旧Twitter)のアルゴリズムは、ユーザーのアプリ滞在時間を延ばす「動画コンテンツ」を優遇して表示する傾向にあります。静止画バナーの延長線上で考えるのではなく、「動画ありき」で戦略を組むことが、現代のマーケティング担当者に求められる必須スキルです。
【この記事でわかること】
- X動画広告の全フォーマットと最新の入稿規定(サイズ・秒数)
- 再生数とコンバージョンを最大化するクリエイティブの勝ちパターン
- 他SNSにはない「拡散による無料リーチ」の仕組みと費用対効果
【要約:X動画広告の要点まとめ】
- 主な種類: プロモビデオ、Amplify(プレロール)、トレンドテイクオーバー、縦型動画広告。
- 費用相場: 視聴課金(CPV)で数円〜15円前後、インプレッション課金(CPM)で400円〜800円が目安。
- 最大のメリット: ユーザーによる「リポスト」後の拡散先での表示は**広告費が発生しない(無料)**ため、爆発的な費用対効果(ROI)が期待できる。
X動画広告とは?今のアルゴリズムで動画が重要な理由
X動画広告とは、タイムラインや検索結果などに表示される動画形式の広告であり、現在のXのアルゴリズムにおいてユーザーの滞在時間を延ばすコンテンツとして優先的に表示されやすい特性を持っています。
なぜ今、テキスト主体のXで「動画」なのか。理由は明確です。
情報伝達量において、1分間の動画はWebページ3,600ページ分に相当すると言われています。タイムラインを高速でスクロールするユーザーの手を止め、短時間でブランドの世界観や商品のメリットを刷り込むには、静止画では限界があります。
さらに、Xの「おすすめ(For You)」タブのアルゴリズムは、ユーザーが長く視聴したコンテンツと類似した投稿をレコメンドする仕組みになっています。動画広告は静止画に比べて滞在時間が長くなりやすいため、結果としてオーガニック投稿のような自然な形でユーザーの目に留まる機会が増加しています。
【一覧表】X動画広告の種類と入稿規定(サイズ・秒数)

X動画広告には、タイムラインに流れる「プロモビデオ」や、プレミアムな動画コンテンツの前に再生される「Amplifyプレロール」など複数のフォーマットが存在し、目的(認知・誘導)に応じて使い分ける必要があります。
Webマーケターが最も頻繁に参照することになるスペック情報を、以下の通り整理しました。特に近年は「縦型動画」のパフォーマンスが向上している点に注目してください。
| フォーマット名 | アスペクト比 | 動画の長さ | ファイルサイズ | 主な目的 |
| プロモビデオ | 16:9(推奨) 1:1(スクエア) | 最長2分20秒 (推奨:15秒以内) | 最大1GB | 認知拡大 ブランド好意度向上 |
| ビデオウェブサイトカード | 1:1(推奨) 16:9 | 最長2分20秒 | 最大1GB | Webサイトへの誘導 コンバージョン |
| 縦型動画広告 | 9:16 | 最長2分20秒 | 最大1GB | 全画面表示での没入感 モバイル最適化 |
| Amplifyプレロール | 1:1 16:9 | 最長2分20秒 (推奨:6秒以内) | 最大1GB | プレミアムコンテンツ視聴層へのリーチ |
| アプリボタン付き動画 | 16:9 1:1 | 最長2分20秒 | 最大1GB | アプリインストール促進 |
※入稿規定は頻繁にアップデートされるため、最新情報は必ず公式ヘルプも併せて確認してください。
X動画広告にかかる費用と課金方式の仕組みは?
X動画広告の費用はオークション形式で決定されますが、一般的に1視聴あたり(CPV)数円〜15円程度、1,000回表示あたり(CPM)400円〜800円程度が相場とされています。
予算規模や目的に応じて、以下の課金ポイントを適切に設定することがCPA(獲得単価)抑制の鍵となります。
- 2秒/50%再生(MRC基準):動画が画面の50%以上表示され、かつ2秒以上再生された時点で課金されます。広く認知を取りたい場合のスタンダードな設定です。
- 3秒/100%再生:動画が100%表示され、3秒以上再生された場合にのみ課金されます。スクロールの手を止めた「関心の高いユーザー」に絞って予算を投下したい場合に有効です。
- 6秒視聴:主にAmplifyプレロール広告などで利用され、強制視聴に近い環境での完全視聴を狙います。
他のSNS広告と比較しても、X動画広告は数千円からの少額出稿が可能であり、テストマーケティングの場としても優れたコストパフォーマンスを発揮します。
他媒体にはない「X動画広告」独自のメリット

X動画広告最大のメリットは、ユーザーが広告を「リポスト」した後の二次拡散先での表示には一切広告費がかからないことであり、クリエイティブ次第でCPA(獲得単価)を劇的に下げることが可能です。
FacebookやInstagram、YouTubeなどの他媒体では、基本的に「表示回数」や「再生回数」に応じて課金され続けます。しかしXの場合、一度ユーザーの手によって拡散(リポスト)されれば、それは「広告」ではなく「オーガニックな口コミ(アーンドメディア)」として扱われます。
- 二次拡散(無料リーチ)の威力:仮に1万人のフォロワーを持つユーザーがリポストした場合、その先の1万人のタイムラインに無料で動画が表示される可能性があります。「バズる広告」を作ることができれば、ROI(投資対効果)は青天井になります。
- 若年層へのリーチ:10代〜30代のアクティブユーザーに深く刺さる媒体特性があり、テレビCM離れが進む層へのアプローチに最適です。
- 音声なし視聴への対応:Xユーザーの多くは移動中などに「ミュート(消音)」で動画を視聴します。視覚情報だけでインパクトを残せる動画広告は、この視聴スタイルに合致します。
成果を出す動画クリエイティブの作り方【5つの鉄則】

Xのタイムラインは高速でスクロールされるため、「冒頭2秒」でユーザーの指を止め、音声なしでも内容が伝わるように字幕を活用することが成果を出すための絶対条件です。
テレビCMをそのまま流用しても、Xでは成果が出ません。以下の5つの鉄則を守り、「Xの文脈」に沿ったクリエイティブを作成してください。
- 「冒頭2秒」に最強のフックを入れる起承転結の「起」ではなく、「結(結論)」や「衝撃的な映像」を最初の2秒に持ってきてください。冒頭で興味を引けなければ、その動画は存在しないのと同じです。
- ブランドロゴは常時表示か冒頭に最後まで見られる保証はありません。冒頭数秒で離脱されても「何のブランドか」が残るよう、ロゴや商品名は最初に出します。
- 「字幕・テロップ」は必須装備約8割のユーザーは音声をOFFにして動画を観ています。字幕がない動画は、内容が伝わらないままスルーされます。重要なメッセージは必ず大きな文字で表示させてください。
- 「UGC(ユーザー投稿)風」の演出作り込まれたCMよりも、スマホで撮影したような「素人感のある動画」や「レビュー風動画」の方が、広告臭が消えてタイムラインに馴染み、完全視聴率が高まる傾向にあります。
- スマホ最適化(縦型・スクエア)横型(16:9)動画はスマホ画面では小さく表示されます。画面占有率が高い正方形(1:1)や縦型(9:16)を採用し、物理的にユーザーの視界をジャックしてください。
[重要] セーフゾーンを意識する
動画の下部や右側には、アプリのUI(いいねボタンやタイトルなど)が重なります。重要なテキストやロゴは、画面の端から一定の距離を置いた「セーフゾーン」内に配置してください。
X動画広告の配信設定ステップ(始め方)

X動画広告の配信は、X広告マネージャーから「キャンペーンの目的」を選択し、ターゲティング(キーワード、フォロワー、興味関心)を設定した上で、動画ファイルをアップロードすることで開始できます。
具体的な手順は以下の通りです。
- 広告アカウントの開設Xのメニューから「広告」を選択し、アカウント設定とクレジットカード情報を登録します。
- キャンペーン目的の選択動画広告の場合、目的に応じて「動画の再生数(認知)」または「ウェブサイトへの誘導(コンバージョン)」を選択します。
- 広告グループとターゲティング設定ここが最重要です。X特有の**「フォロワーめがけターゲティング(競合他社やインフルエンサーのフォロワーに配信)」や、特定の話題について投稿・検索している人を狙う「キーワードターゲティング」**を活用し、無駄打ちを防ぎます。
- クリエイティブの入稿用意した動画をアップロードし、広告用のツイート本文(140文字以内で簡潔に)を入力して配信を開始します。
成功事例から学ぶ:効果の高かった動画広告パターン
成功事例に共通するのは、単なるCMの転用ではなく、Xの文脈(トレンドやユーザーのノリ)に合わせた「会話のきっかけ」になるような動画構成を採用している点です。
- 事例パターンA(B2C:漫画動画)商品そのものを売り込むのではなく、ターゲット層が抱える「悩み」や「あるある」を漫画形式の動画で表現。共感を生み出し、「わかる!」「これ私のことだ」という引用リポスト(引用リツイート)を大量に発生させ、結果的に低CPAで認知を拡大しました。
- 事例パターンB(B2B:ノウハウ切り出し)ホワイトペーパーの内容をパラパラ漫画のように見せる動画や、セミナーのハイライト動画を配信。「続きはWebで」という導線設計により、関心の高いリード(見込み客)の獲得に成功しています。
よくある質問 (FAQ)
Q1. X動画広告の審査時間はどのくらいですか?
A. 通常、入稿から24時間〜48時間以内に審査が完了しますが、繁忙期や内容によっては数日かかる場合もあります。キャンペーン開始直前ではなく、余裕を持った入稿を推奨します。
Q2. 個人でもX動画広告を出稿できますか?
A. はい、Xプレミアム(有料プラン)に加入している認証済みアカウントであれば、個人・企業問わず広告を出稿することが可能です。
Q3. 横型動画と縦型動画、どちらが効果的ですか?
A. 現在のスマートフォンの視聴環境では、画面占有率が高い**「縦型(9:16)」または「スクエア(1:1)」**の方が、視認性が高くクリック率も向上する傾向にあります。
Next Step:明日やるべき具体的なアクション
この記事を読み終えたあなたが、明日すぐに着手すべきアクションは以下の通りです。
- 既存の動画素材の「アスペクト比」を確認するYouTube用の横長動画(16:9)しかない場合は、編集ソフトで**「スクエア(1:1)」にトリミング**し、上下に黒帯が出ないように加工してください。これだけでCTR(クリック率)が変わります。
- 競合の「フォロワーアカウントリスト」を作成するX広告のターゲティングで使用するため、自社のターゲット層と重なる「競合他社」や「業界のインフルエンサー」のアカウントID(@以降)を10〜20個リストアップしてください。
- 少額テスト配信の準備まずは1万円程度の予算で構いません。「動画A(商品訴求)」と「動画B(課題共感)」の2パターンを用意し、どちらがリポストされやすいか検証する準備を始めてください。
